台湾の昆虫食文化|タイワンタガメは台湾にいないという事実

2020年11月5日


台湾の昆虫食文化|タイワンタガメは台湾にいないという事実



こんにちは、台湾の大学院に通う耕平(@HEYinTW)です。

昆虫食関連の記事を読んでいると「タイや台湾などでは昆虫を食べる文化が」などという記載を見かけます。まとめ記事などに多いんですが、おそらくしっかりとした認識を持っていない、なんとなくで書かれたものもあるでしょう。

実際、台湾に昆虫食文化はあるのか?

台湾 昆虫食」でGoogleかけても情報はほぼゼロ…。そこで今回は台湾歴&昆虫愛好歴の長い僕から、台湾の昆虫食文化/歴史のお話をしていきたいと思います。

 

台湾の昆虫食文化は意外と乏しい

昆虫食というとタイやラオス、カンボジアなどの東南アジアを思い浮かべるという人は多いでしょう。台湾は東南アジアではないですが、亜熱帯にも属するので日本よりも浸透してるだろう、と考えるのもおかしくはないです。

確かに一部夜市で売られているのは事実なんですが、あれはエンタメ要素がほとんど。

好きな方は知っていると思いますが、「タイワンタガメ」「タイワンオオコオロギ」など「台湾」の名が入った昆虫食も日本ではよく売られています。

でも実は、日本よりも浸透していないというのが現実です。

 

台湾の名が入った有名な昆虫食

タイワンタガメ

タイワンタガメの画像をGoogleで検索

ここで昆虫食愛好家に衝撃の事実を伝えます。心して聞いてください。

【タイワンタガメの学名】

Lethocerus indicus

その名の通り実はインド起源で、台湾での呼称はインドオオタガメ(印度大田鱉)

文献を読むと、台湾に生息していたタガメは先ほどのインドオオタガメ(Lethocerus indicus)日本にも生息する種類(Lethocerus deyrolli)2種類のみ。「台湾のタガメ」は存在しません。

しかも台湾では日本と同様に自然の開発や農薬使用の一般化によって数が激減し、タガメの最後の採集記録は1985年だと言われています。

つまり、もう30年以上も台湾には野生のタガメがいない可能性があるということです。(参考:政院農業委員會務局保育研究系「台灣瀕危物種台灣大田鱉之棲地與族群普」)

なぜ「タイワンタガメ」と呼ばれるようになったのか…。ご存知の方いましたらご教授願います。

日本に輸入されるタイワンタガメの多くはタイ産が多く、台湾ではまだ養殖もされていません。昆虫食に関する資料中に、台湾でもタガメを食していた文化はあったけど、数の激減+養殖されなかったことで文化は消失してしまったと読んだことがあります。

 

タイワンオオコオロギ

タイワンオオコオロギの画像をGoogleで検索

こちらもよく聞く名前じゃないでしょうか。学名はBrachytrupes portentosus Lichtenstein。僕らがよく知っているサイズの2倍くらい大きなコオロギです。こちらはタガメとは違い、現在も台湾全土に生息しています。

【主な生息地】

中国、台湾、フィリピン、インドネシア、マレーシア、インドシナ半島、インドなど

食用としての歴史はあるものの、文化として現代まで根付きませんでした。

昆虫食が注目されるようになった最近、タイワンオオコオロギ(台湾大蟋蟀)を食べると言ったイベントが増えています。タイやカンボジアなどでは現在もよく食べられ、日本でも消費されています。

台湾にはこのオオコオロギの巣穴に水を入れ、飛び出してきたコオロギを捕まえる『灌蟋蟀』と呼ばれる遊びがあり子供の頃よくやっていたという人も多いです。また、『 鬥蟋蟀』と呼ばれるコオロギ同士を戦わせる遊びも文化として一部地域で根付いています。

 

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台湾の昆虫食の歴史

上記で昆虫食文化は浸透していないと説明しましたが、食べられてきた歴史はあります。以下に簡単にまとめてみました。中国語の記載なので全て意訳しています。

1736 臺海使搓錄

「セミを捕まえて加熱し、酒のつまみにしていた」

1766 小琉球漫誌

「サトウキビの根元に虫がいて、人々は油で揚げ食べていた」

1852 噶瑪蘭廳志

「ゲンゴロウは塩漬けで食べるととても美味である」

1912 日本人「平塚」の文章中

「ゲンゴロウムシは土名水龜と稱し煮てこれを臺灣料理の一品となすと云ふ」

「ケラ(螻蛄)は蟋蟀科に属し本島にわりては土名土猿又は吐白仔も稱し(中略)南部地方にわりて五六月の頃土人これを採集して煮食すると云ふ」

1920 臺灣通史

「蔗龜(クロマルカブト)は油で揚げて食べれる」「コオロギの身は厚く白い、油で揚げて食べられる」

2012 三橋淳(昆虫食古今東西)

「台湾では台湾大蟋蟀の巣穴に水を入れて飛び出たそれを捕獲し食用する。コガネムシやハチ類の幼虫や蛹を季節ごとに応じて市場で売ったり、薬やお酒にして売ったりしていた」

2014年の民間調査により、1970年代は台湾タガメの卵を蒸して食べていたという習慣があるとの報告、また2015年の調査では中華蝠蛾やゾウムシの幼虫や、バッタ類などを食べていたと報告あり。

参考:科學月刊584期

このように台湾でも虫を食べてきた歴史、文化は存在していました。台湾にはミャンマーやカンボジア、中国の雲南省など昆虫食文化のある国からの移住華僑も多く存在するので、探せば国内でも食べることができます。

日本で流行しているような綺麗に盛られたエンタメ料理なんかではなく、現地で食べられるような「はい、虫!」というものが食べられるでしょう。

 

漢方薬としての利用

昆虫の中にはローヤルゼリーに代表されるように栄養価の高い副産物を生産できるものもあります。昆虫を煎じて飲むというのは東洋医学では珍しくなく、今もその名残があるものもあります。

例えば台湾の食藥署(日本でいう厚生労働省)は花粉、赤虫、ローヤルゼリー、擬黑多刺蟻(Polyrhachis vicina Roger)、カイコタンパクなど11種類が食品の原料として利用可能な昆虫由来の原料だと記載されています。

 


 

最近の活動

昆虫食のメリットを本気で語る記事でも説明していますが、2013年から昆虫食を普及させる動きが世界中で行われています。

台湾でもゆっくりと「昆虫食」に向き合う様子が見られますが、専門に扱う企業も少なく、力を入れているかという面ではまだまだです。昆虫の姿形をそのまま販売している台湾昆虫食企業はゼロと言っても過言ではないでしょう。

台湾には昆虫学科のある大学が2校、キャンパス内に博物館のある大学が1校あり、研究が行われています。国土も小さく拡散性が大きいのでふとしたタイミングで一気に加速するかもしれません。

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これからの動きにも注目したいところです。